2024.08.02
上棟式・棟上げとは何をするもの? 大工さんへのお礼としてご祝儀や手土産は必要?
建築には、いくつかの伝統的な祭式があります。中でも地鎮祭・上棟式・竣工式は建築の三大祭式と呼ばれ、工事の無事やその土地・建物における安全・安心な暮らしを祈るための儀式として大切にされています。
これらは戸建て住宅などの小規模な建物においても催されることがあるため、家を建てる時に実施するべきか悩む方もいるのではないでしょうか。この記事では、そんな三大祭式のひとつである「上棟式」について解説します。戸建て住宅で採用されることの多い簡略的な上棟式についても紹介しますので、ぜひご覧になってみてください。
注文住宅を建てるまでの流れについての詳細は下記の記事をご覧ください。
⇒「家を建てる! と決めたらまず何をすべき? 注文住宅を建てるまでの流れを確認」
建築の三大祭式「地鎮祭」「上棟式」「竣工式」
建築の三大祭式である地鎮祭・上棟式・竣工式を実施する時期と意味合いは下表の通りです。
時期 | 意味合い | |
---|---|---|
地鎮祭 | 着工前 | 工事の無事な進行と土地・建物の末永い安全を祈願する |
上棟式 | 柱や梁の取り付け完了時 | それ以降の工事が安全に進むことを祈願する |
竣工式 | 竣工時 | 今後の安全・繁栄を祈願する |
これらはいずれも必ず実施しなければいけない祭式ではなく、地域の風習などを考慮して施主が実施を決められます。また、その規模も千差万別であり、近年では神主を呼ばない簡略的な祭式を行い、安全・繁栄を祈願するスタイルも増えています。
工事関係者と良好な関係を築くきっかけになることも、これらの祭式を催すメリットのひとつです。地元の工務店などに家づくりを依頼すると、アフターメンテナンスを含めた長い付き合いになります。関係者の顔を知っておけば不具合が生じた時も気軽に連絡できるでしょう。
地鎮祭についての詳細は下記の記事をご覧ください。
⇒「家づくりの際に行う地鎮祭とはどういうもの? 服装など事前に知っておくべきこと」
棟上げとは
上棟式の関連語に「棟上げ」という言葉があります。棟上げは屋根の頂部に「棟木」という部材を設置する木造軸組工法の工程であり、建物の骨組みはこのプロセスを経て完成します。昔の棟上げは大掛かりで重要な工程だったため、完了するとひとつの区切りとして神主に祈祷してもらっていました。これが本来の上棟式です。
しかし、ツーバイフォーなどの現代工法を採用した木造建築物や、鉄骨・鉄筋コンクリート造の建築物には棟上げという工程が存在しません。それでも、柱や梁などの骨組みを取り付けたタイミングで以降の工事が安全に行われることを祈願するための儀式として、上棟式という文化は残っています。大規模なプロジェクトでは大きな祭式が催されますが、戸建て住宅のように規模の小さな建物では、神主を招かずに工務店などに依頼し、簡略的に行うのが一般的となっています。
簡略的な上棟式とは
それでは、近年増えている簡略的な上棟式について解説します。ここでご紹介するのは一般的なものですが、施主の意向によって調整が可能なので、依頼する工務店などに相談してみましょう。
●簡略的な上棟式の流れ
簡略的な上棟式は一般的に以下のような流れで行われます。直会の儀(祭式後の会食)を行わないなど、さらに簡略化することもあります。
・棟梁が幣串(へいぐし=魔よけの飾り)を設置する
・祭壇に御幣(ごへい)や神饌物(しんせんぶつ)などの捧げものを供える
・四方固めの儀を行う:施主と棟梁が四隅の柱に酒・塩・米・水などをまく
・二礼二拍手一礼でその先の工事が無事に進行するよう祈願する
・直会(なおらい)の儀を行う:施主が挨拶をして乾杯する
・手締めで式を締める
・施主から出席者にご祝儀や手土産などを渡す
●上棟式の依頼
簡略的な上棟式は、工務店などに主導してもらうため、上棟式を催す際は工務店に依頼します。神主を招く場合は、神主に依頼しましょう。戸建て住宅では基礎工事が完了するとあっという間に柱や梁の取り付けが完了します。相談が遅いと上棟式の実施が難しくなることも考えられるので、着工前にあらかじめ相談しておくと良いでしょう。
上棟式を準備する際は、以下の3つを進めましょう。
・人数の把握:家族・親族・工事関係者など
・日程の決定:六曜の大安・友引や十二直の建築吉日など
・物の準備:棟札・御幣・米・酒・弁当・菓子・飲み物・紙コップ・ご祝儀・引き出物など
建築吉日は、建築の祭式を行うのに良いとされる日です。六曜とは異なる歴注である「十二直」のうち、「建(たつ)・満(みつ)・平(たいら)・定(さだん)・成(なる)・開(ひらく)」が建築吉日とされています。
●上棟式の服装
伝統的な上棟式の服装はスーツなどのフォーマルなスタイルが一般的ですが、簡略的な上棟式の場合はカジュアルな服装で参加する人が増えています。関係者に失礼のないように清潔感のある服装が良いでしょう。
●上棟式にかかる費用の目安
上棟式の費用は地域の慣習や規模、参加人数によって異なります。一般的には以下のような費用が必要とされていますが、金額はあくまで目安です。
・ご祝儀:棟梁1〜3万円、職人:3千〜1万円/人、現場監督1万円程度/人
・お供え物:1万円程度
・飲食物:2千〜3千円程度
上棟式の実施は施主次第。後悔のない家づくりを。
家づくりにおいて上棟式などの祭式は必須ではありません。しかし、これらの祭式を実施することは工事関係者との良好な関係に繋がり、アフターメンテナンスを気兼ねなく頼めるきっかけにもなります。また、祭式が家族と特別な時間を共有する機会になることもあるでしょう。いずれにしても、家を建てる際は後悔しないように検討してみてください。