2024.10.09

省エネ住宅とは 2025年からの省エネ基準適合義務化ってどういうこと? メリット・デメリットも紹介

2025年に予定されている省エネ基準適合住宅の義務化で省エネ住宅に注目が集まっています。しかし「省エネ住宅の基準は?」「メリットはあるの?」という疑問を持たれている方は多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、省エネ基準適合住宅の種類や概要について詳しくご紹介します。

注文住宅を建てるまでの流れについての詳細は下記の記事をご覧ください。
⇒「家を建てる! と決めたらまず何をすべき? 注文住宅を建てるまでの流れを確認

2025年、省エネ基準適合住宅が義務化へ

省エネ基準適合住宅が義務化される法改正が2025年4月1日に施行されます。住宅や建築物のエネルギー消費を効率化することで、温室効果ガスの排出削減を目的としています。すべての新築住宅が省エネ基準に適合し、省エネルギー対策の強化が予定されています。

省エネ基準適合住宅とは|種類や基準

省エネ基準適合住宅の種類としては、主に下記が挙げられます。

●長期優良住宅

省エネ

国土交通省は、長期優良住宅を「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」としています。建築及び維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで認定を受けられます。認定基準としては下記の項目が挙げられます。

・長期に使用するための構造及び設備を有していること。
・一定面積以上の住戸面積を有していること。
・地域の居住環境を維持・向上するために配慮されたものであること。
・維持保全計画が適切なものであること。
・自然災害による被害の発生の防止・軽減に配慮されたものであること。

こういった基準を満たす住宅が認定されると、様々な税制上の優遇などを受けられるようになります。

長期優良住宅については、下記記事もご参照ください。
⇒「長期優良住宅とは? そのメリット・デメリットと、申請から認定通知書発行まで

●低炭素住宅
低炭素住宅とは二酸化炭素の排出の抑制に資する建築物のことで、所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定を行うものを指します。長期優良住宅と異なる点は、認定の基準が省エネに特化していることです。認定を受けるには、下記の基準を満たす必要があります。

・省エネ法の省エネ基準に比べ、一次エネルギー消費量が-20%以上であること。
・再生可能エネルギーの利用設備が設けられていること(太陽光発電など)。
・省エネ効果による削減量と再生可能エネルギー利用設備で得られるエネルギー量の合計値が基準一次エネルギー消費量の50%以上であること(一戸建て住宅の場合のみ)。
・その他の低炭素化に資する措置が講じられていること。

一次エネルギー消費量とは、冷暖房や換気、給湯、照明などの設備機器を使用した際に発生するエネルギー量を指します。

●ZEH住宅

省エネ

ZEH(ゼッチ)は「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略語で、「外皮の断熱性能等を大幅に向上させ、高効率な設備システムの導入によって室内環境の質を維持しつつ、大幅な省エネルギーを実現した上で再生可能エネルギー等を導入し、年間を通じた一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指した住宅」です。つまり、建物の断熱性能を高め、省エネ設備によってエネルギーの消費量を抑える。そして、再生可能エネルギーを活用することで、エネルギーの収支が正味0になることです。認定には下記の基準に該当する必要があります。

① ZEH強化外皮基準(地域区分1〜8地域の平成 28 年省エネルギー基準(ηAC 値、気密・防露性能の確保等の留意事項)を満たした上で、UA 値[W/m2K] 1・2地域:0.40以下、3地域:0.50以下、4〜7地域:0.60以下)
UA値は、屋内の熱が外皮を通じてどれくらい逃げやすいかを表した数値で、この値が小さいほど断熱性能が高いです。
1・2地域は北海道をはじめとする寒冷地域。東京や大阪は5・6地域に多く該当しています。
② 再生可能エネルギー等を除き、基準一次エネルギー消費量から20%以上の一次エネルギー消費量削減
③ 再生可能エネルギーを導入(容量不問)
④ 再生可能エネルギー等を加えて、基準一次エネルギー消費量から100%以上の一次エネルギー消費量削減

●LCCM住宅
LCCM(エルシーシーエム)住宅は「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の頭文字からついた名称です。建設時・運用時・廃棄時に出来るだけCO2削減に取り組み、さらに太陽光発電などを利用して再生可能エネルギーを創出し、住宅建設時のCO2排出量も含め、ライフサイクルを通じたCO2の収支をマイナスにするのが特徴です。
ZEHは運用時の年間のエネルギー収支に着目するのに対し、LCCMは、運用前後の建築時と廃棄時も含めたエネルギー収支にも配慮しています。

認定基準は、下記の2項目のうち、いずれかを満たすものとなります。
①LCCM適合判定ルート:CASBEE−戸建(新築)に基づく、「LCCM住宅部門の基本要件(LCCO2)適合判定ツール」にて評価した計算結果が「適合」である住宅。
②CASBEE認証ルート:CASBEEの戸建評価認証制度に基づき認証された、環境効率ランクがSまたはAであり、かつライフサイクルCO2ランクが、緑☆☆☆☆☆(5つ星)である住宅。

●性能向上計画認定
性能向上計画認定は、建築物省エネ法第35条に係る建築物エネルギー消費性能向上計画の認定が誘導基準に適合している旨を所管行政庁(都道府県、市又は区)が認定を行うものを指します。認定には下記の基準に適合する必要があります。

・建築物のエネルギー消費性能が、省エネ基準を超え、経済産業省令・国土交通省令で定める誘導基準に適合するものであること。
・建築物エネルギー消費性能向上計画に記載された事項が基本方針に照らして適切であること。
・資金計画がエネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること。

省エネ基準適合住宅の確認方法・調べ方

省エネ

ここでは、省エネ基準適合住宅の確認方法や調べ方をご紹介します。

●新築の場合|省エネ基準の適合性審査
新築住宅の場合は改正される建築物省エネ法に基づき、建築確認手続きの中で省エネ基準への適合検査が行われます。原則、すべての新築住宅に適合が義務化される予定です。
審査に関わる手続きは、住宅会社が代行することが多いと思われますので、確認してみましょう。

●建売・中古等の場合|省エネ性能表示制度
建売住宅や中古住宅の場合は2024年4月から始まった「省エネ性能表示制度」の確認が必要です。これは消費者等が建築物を購入・賃借する際、省エネ性能の把握や比較ができるようにする制度です。

具体的には新築建築物の販売・賃貸の広告等に省エネ性能の表示ラベルの表示が必要となっています。ラベルにはエネルギー消費と断熱の性能が★マークや数字で表示されます。建物の種類(住宅(住戸/住棟)、非住宅、複合建築物)と評価の方法(自己評価、第三者評価)、再エネ設備の有無で建物の省エネ性能をチェックできます。
2024年3月以前に建築確認申請を行った物件については、ラベルの表示は必須ではありませんが、省エネ性能が評価されている場合には、表示することが望ましいとされています。

省エネ基準適合住宅のメリット

省エネ

省エネ基準適合住宅のメリットには下記の項目があります。

●環境に優しい住宅
省エネ基準適合住宅にはエネルギー効率の高い設計や設備が備わっているので、環境に優しいだけでなく光熱費も節約できる多くのメリットがあります。断熱性能が高いことに加え、エネルギー効率の良い設備を導入しているため、暖房や冷房の使用を抑えることができます。これにより、年間を通じて光熱費が大幅に削減されるのです。特に断熱性能の向上や高効率な空調・給湯機器の使用はエネルギー消費を抑える大きな要因となっています。

断熱についてはこちらの記事もご覧ください。
⇒「断熱とは?遮熱との違いと外張り断熱・充填断熱の特徴を知り、快適な家づくりを!

●住宅ローン減税を受けられる
住宅ローン減税とは、住宅を新築または購入する場合、一定条件のもとで住宅ローンが控除される制度です。ローンの年末残高に対して0.7%が所得税等から控除され、結果として年間の税負担が軽減されるのです。

2024年度以降に新築する場合、省エネ基準を満たさない新築住宅は、住宅ローン減税の対象外となります。申請には「認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、ZEH水準省エネ住宅、省エネ基準適合住宅のいずれか」を証明する書類の提出が必要です。

●資産価値に影響がある
環境や光熱費の面におけるメリットの他に、省エネ基準適合住宅は資産価値への影響を与える点も大きな特徴です。近年は環境意識の高まりやエネルギー効率の向上に対する需要が増えているため、高い省エネ基準を満たしている住宅は市場価値の向上が期待されます。高断熱や再生可能エネルギーの利用といった具体的な省エネ設備を導入した住宅は将来的にリセールバリューが高まる可能性があります。

●断熱性能が向上し、居住空間が快適になる
省エネ基準適合住宅は断熱性能が高いため、居住空間の快適性が大幅に向上します。冬は暖かさを逃がさず、夏は外の熱を遮断できるため、年間を通じて快適な室温が保たれ快適で過ごしやすくなります。

室温が一定に保たれると温度差によるヒートショックなどの健康リスクを減らすことにもつながります。結露やカビが抑制されれば、アレルギーや呼吸器系の問題が発生しにくくなるため、健康にも良い影響をもたらします。

●固定資産税の減免措置を受けられる場合がある
一定条件を満たした省エネ基準適合住宅は固定資産税の減免措置が受けられる場合があります。例えば東京都の場合は改修工事完了年の翌年度分(改修工事完了日が1月1日の場合はその年度分)の固定資産税に限り、当該住宅の一戸あたり120m²の床面積相当分までに対する固定資産税額の3分の1が減額されます。

減免措置は住宅取得後のコストを抑え、住まいの維持費用を長期的に軽減する重要なポイントです。ただし、自治体によって金額や条件が異なる場合があるので公式サイトを確認してみましょう。

省エネ基準適合住宅のデメリット・注意点

省エネ基準適合住宅には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットや注意点も存在します。具体的なデメリットとして、下記の点に注意しましょう。

・住宅の価格が高くなる
・種類や選択肢がハウスメーカーや工務店で異なる

省エネ基準を満たす住宅は、断熱材や高性能の窓、設備などを使用するため、一般的に初期の建築コストが高額になります。ただし、初期コストは高いものの、長期的には光熱費の節約が見込まれるため、ライフサイクルコスト全体で見ると経済的に有利なケースもあります。

省エネ基準適合住宅の設計や性能は、依頼するハウスメーカーや工務店によって様々ですので、見積もりは複数の業者から取り、仕様を比較検討することが重要です。

まとめ

環境意識が高まったことにより、省エネ住宅のニーズが増えています。2025年度以降は制度が義務化されるので、住宅の新築・購入を検討されている方はぜひチェックしておきましょう。

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