2025.06.02

長期優良住宅とは? 新設のGX志向型住宅やZEHとの違いとメリット・デメリット

住宅の新築を検討する際、「長期優良住宅」という言葉をよく耳にするのではないでしょうか。長期優良住宅に認定されると、安心して暮らせるだけでなく、税制上の優遇措置も受けられます。しかし、「長期優良住宅とは何か」「GX志向型住宅やZEHとはどう違うのか」といった疑問をお持ちの方もいるかもしれません。そこでこの記事では、長期優良住宅の基本的な情報から、そのメリット・デメリット、申請から認定までの流れ、そしてGX志向型住宅やZEHとの違いについて解説します。
さらに、長期優良住宅に最適なニチハの外壁製品もご紹介しますので、ぜひ家づくりの参考にしてください。

注文住宅を建てるまでの流れについて詳しくは、下記記事をご覧ください。
⇒「家を建てるまでの流れが知りたい! 年収や頭金はどれぐらい必要? 注文住宅の基礎知識

長期優良住宅とは

長期優良住宅

長期優良住宅というのは、長く・快適に・安心して住み続けられる住宅です。
国土交通省は「長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅」を長期優良住宅としています。

長期優良住宅として認定されるには、国が定める以下の基準をクリアしなければなりません。
・住宅の構造・設備が長期に渡り良好な状態で使用できる
・良好な居住水準を確保できる住宅面積を有している
・地域の居住環境の維持・向上への配慮
・適切な維持保全計画
・自然災害の被害発生の防止・軽減への配慮

長期優良住宅は快適に暮らせるだけでなく、耐震性やバリアフリーなども考慮されており、安心・安全に生活することができます。
さらに、省エネ性能も高く、地球環境にも優しいという特徴があるのです。

長期優良住宅の認定制度は2009年に始まりましたが、2024年3月末時点での累計認定戸数は150万戸を超えています。2023年度に限ると、認定戸数は11.1万戸に達し、これは同年度に着工された新築一戸建ての約3割に相当します。この数字からもわかるように、長期優良住宅の数は年々増加しており、その注目度の高まりがうかがえます。

長期優良住宅のメリット

長期優良住宅

長期優良住宅のメリットとして挙げられるのは下記の3つです。

①快適に生活できる
長期優良住宅の認定を受けるためには、高い住宅性能が求められるため、結果として長期間にわたり快適な生活を送ることができます。例えば、省エネルギー性の基準として、断熱性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上を満たす必要があります。断熱性能が向上することで、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境が実現し、一年を通して快適に過ごせるようになるでしょう。

省エネ住宅についてはこちらの記事もご覧ください。
⇒「省エネ住宅とは 2025年からの省エネ基準適合義務化ってどういうこと? メリット・デメリットも紹介

断熱についてはこちらの記事もご覧ください。
⇒「断熱とは?遮熱との違いと外張り断熱・充填断熱の特徴を知り、快適な家づくりを!

②住宅の資産価値が保ちやすい
長期優良住宅は「次世代に渡って住み継げる住宅」として、長期に渡って暮らすことを前提として建設されます。
耐震性能や維持管理などの一定水準をクリアすることが求められるため、住宅の資産価値を長期間維持しやすいという特長があります。将来的に売却する際にも、資産価値が低下しにくく、長期優良住宅であるという安心感から買い手が見つかりやすいと考えられます。

③減税や住宅ローンの金利引き下げ・補助金など、様々な経済的メリットがある
長期優良住宅は国の推進する制度でもあることから、建築時には様々な補助金を利用できます。
また、認定を受けることによって減税などの経済的なメリットも得られます。

長期優良住宅の認定による税金の減額・控除には以下のようなものがあります。
・住宅ローンの減税(控除)(2025年12月31日までに入居した場合)
・フラット35の住宅ローン金利優遇
・不動産取得税の控除(2026年3月31日までに新築された住居)
・登録免許税に関する軽減税率の適用(2027年3月31日までに新築された住居)
・地震保険料の割引

例えば、住宅ローン減税が適用される借入限度額は、2025年に入居する場合、省エネ基準適合住宅では3,000万円ですが、長期優良住宅に認定されると4,500万円に引き上げられます。さらに、子育て世帯または夫婦のいずれかが40歳未満の世帯であれば、限度額は5,000万円まで拡大されます。
このように、税制面で優遇措置を受けやすくなることは、住宅のトータルコストを考慮する上で大きなメリットと言えるでしょう。

長期優良住宅のデメリット

多くのメリットがある長期優良住宅ですが、デメリットも存在するため、事前に把握しておくことが重要です。主なデメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

①建築コストが高価になりやすい
長期優良住宅の基準を満たすためには、耐力面材や断熱材などの建材のグレードを上げる必要があり、その結果、建築コストが上昇する傾向にあります。建築会社によって異なりますが、一般的な住宅と比較して2〜3割程度のコスト増となる可能性があります。また、建築期間も通常より長くなる傾向があります。
ただし、初期費用は高くなるものの、長期的な視点で見ると、必ずしもコスト高とは言えません。例えば、断熱性能の向上は空調効率を高め、冷暖房費の削減につながります。また、住宅維持保全計画の基準を満たすために、メンテナンスの負担が少ない外壁材を選択することも有効です。定期メンテナンスの頻度を抑えることができれば、長期的なメンテナンスコストの削減につながります。

ただし、外壁材を選ぶ際には、メンテナンス性だけでなく、耐震性能や断熱性能も考慮し、壁面全体として長期優良住宅の基準を満たす必要がある点に留意しましょう。

ニチハの耐力面材『あんしん』は、その名の通り高い耐震性を備え、建物の様々な面での「安心」を支えます。

あんしん』は、1枚で筋かい2本以上の耐力があります。

長期優良住宅

②申請に費用がかかる
長期優良住宅の認定には申請が必要なので、そのための費用が発生します。
一般的にはハウスメーカーなどに代行を依頼することが多く、その場合、20〜30万円程度の費用となることが多いようです。

③維持管理に関する履歴の作成と保存が必要になる
長期優良住宅は、建設して終わりではありません。建設後も、建物の良好な状態を維持するために定期的な点検やメンテナンスが求められます。さらに、その記録を作成し、保管する必要があるため、手間と時間がかかる点には留意が必要です。
点検記録の提出は義務ではありませんが、自治体から求められた際には報告する必要が生じます。適切な管理ができていないと判断された場合、認定が取り消される可能性もあるため、定期的な点検の実施と記録の保管は非常に重要です。
手間はかかりますが、点検の実施と履歴の作成・保管は、安心かつ快適な生活を長く続けるための大きなメリットと捉えられます。将来的に住宅を売却する際にも、メンテナンスの状況を買い手に示すことで、安心感を与えることができるでしょう。

長期優良住宅の申請から認定通知書が発行されるまでの流れ

長期優良住宅

長期優良住宅の認定を受けるためには、所轄の行政庁(自治体)に申請することが必要です。
また、申請するタイミングは着工前という点にも注意しましょう。
ただ、一般的にはハウスメーカーなどの住宅会社を通じて行うため、手続き自体はそれほど難しくありません。

ここでは、長期優良住宅として認定されるまでの大まかな流れを見ていきましょう。

1. 確認申請書の提出
2. 確認書または住宅性能評価書の発行
3. 認定通知書の発行

①確認申請書の提出
自治体への申請前に住宅性能評価を登録住宅性能評価機関に依頼します。
これには確認申請書または設計住宅性能評価申請書、添付図書(設計内容説明書や各種図面、計算書など)の提出が必要となります。

②確認書または住宅性能評価書の発行
登録住宅性能評価機関の評価で認定基準を満たしていると判断されれば、確認書もしくは住宅性能評価書が発行されます。

③認定通知書の発行
確認書の取得後は必要書類を揃えて所轄の行政庁(自治体)に提出します。
提出後の審査に通ると認定書が交付されます。

ZEHとは

長期優良住宅

長期優良住宅同様、住宅性能の高い家にZEH住宅があります。

●概要
ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略称です。
具体的には、高断熱性能や省エネ設備を導入してエネルギー消費量を抑えつつ、太陽光発電などの再生可能エネルギーを創り出すことで、年間のエネルギー消費量と創出量を実質的にゼロ以下にすることを目指した住宅です。
ZEHは、省エネ、断熱、創エネという要素で構成されており、認定を受けるためには「断熱等性能等級5以上」や「基準一次エネルギー消費量を20%以上削減」といった基準を満たす必要があります。

●メリット
ZEHのメリットとしては、下記の3点が挙げられます。

①光熱費が削減できる
ZEHは高い断熱性能により室温が安定しやすく、暖房効率が向上します。
さらに、太陽光発電などの再生可能エネルギーで自宅の電力を賄えるだけでなく、余った電力で売電収入を得ることもでき、光熱費の削減が可能です。

②災害時の電力を確保できる
太陽光発電と併せて蓄電池を導入することで、非常時でも電力の確保が可能となり、災害時においても自宅での生活を維持しやすくなります。

③快適に暮らせる
高い断熱性能によって、夏は涼しく冬は暖かい快適な室内環境を年間を通して維持できることは、大きなメリットと言えるでしょう。

●デメリット
ZEHのデメリットとしては、下記の2点が挙げられます。

①建築コストやメンテナンス費用が高価になりやすい
断熱・省エネ性能の高い建材などを使用するため、ZEHの建築費用は一般的な住宅よりも建築費は高くなる傾向にあります。
また、太陽光発電は定期的なメンテナンスが必要になるので、その費用も考慮しなければなりません。
しかしながら、光熱費の削減効果や売電収入を含めて考えると、長期的には経済的メリットが期待できます。

②発電量が地域や天候に左右される
太陽光の発電量は天候にも左右されるため、日照時間が短い地域や周辺に高い建物があって日当たりが悪い場合など期待通りの発電量が得られないケースもあります。

●長期優良住宅とZEHの違い
長期優良住宅とZEHは、どちらも国の定める基準を満たした高性能な住宅であるという点は共通しています。しかし、その目的には違いがあります。長期優良住宅は、長く安心して快適に住み続けられる耐久性の高い家を目指すのに対し、ZEHは年間のエネルギー消費量の実質的なゼロを目指す家です。この目的の違いから、それぞれの認定基準や適用される優遇制度・補助金制度も異なります。
光熱費を削減するために省エネ性能を重視するならZEHが適しており、省エネ性能に加えて、災害への強さや長期的な快適性を求めるなら長期優良住宅がより適していると言えるでしょう。

GX志向型住宅とは

長期優良住宅

2024年に新しく創設された省エネ性能の高い住宅がGX志向型住宅です。

●概要
GX志向型住宅(脱炭素志向型住宅)とは、環境負荷の軽減を目的とし、エネルギー効率を最大限に高めた住宅です。
グリーントランスフォーメーション(GX)と呼ばれる考えを取り入れた次世代型の省エネ住宅で、ZEH水準を大きく上回る基準が設けられています。

具体的には、下記の基準を満たす必要があります。
・断熱等性能等級6以上
・再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率が35%以上
・再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率が100%以上
・HEMS(高度エネルギーマネジメント)の導入

GX志向型住宅は、2050年のカーボンニュートラル実現のために国により早期普及が進められています。

●メリット
GX志向型住宅のメリットとして下記の3つが挙げられます。

①光熱費が削減できる
GX志向型住宅はZEHの省エネ水準を大きく上回り、断熱性・省エネ性・再生可能エネルギーの活用をより一層重視しているため、光熱費のさらなる削減が期待できます。

②快適に暮らせる
光熱費の削減効果とともにより一層快適な室内環境の維持にもつながることが期待できます。

③将来的に資産価値の向上が期待できる
国が早期普及を推進していることから、今後GX志向型住宅の注目度や需要は高くなることが予想されます。 高い省エネ性をはじめとするメリットは、将来的な資産価値の向上にもつながるでしょう。

●デメリット
GX志向型住宅のデメリットとして下記の2つが挙げられます。

①建築コストやメンテナンス費用が高価になりやすい
GX志向型住宅も性能に優れた家であることから、ZEHと同様に一般的な住宅よりも建築費用は高くなる傾向があります。
太陽光発電設備や省エネ設備は一般的な住宅設備に比べてメンテナンスコストがかかる傾向があるため、長期的な視点でメンテナンス費用をあらかじめシミュレーションしておくことをお勧めします。

②立地によって制約がかかる
また、太陽光発電の発電量が立地により制限を受ける場合があることに加え、土砂災害特別警戒区域や市街化調整区域などの特定の地域では、GX志向型住宅の対象とならないケースがあるため注意が必要です。

●長期優良住宅とGX志向型住宅の違い
長期優良住宅とGX志向型住宅では認定基準が大きく異なり、GX志向型住宅はより厳しい条件が設けられています。
例えば、断熱等性能等級においては、長期優良住宅が5以上であるのに対し、GX志向型住宅では6以上が求められます。
このように基準のハードルが高い一方で、GX志向型住宅は、長期優良住宅よりも補助金制度などの優遇措置が適用されやすいという違いもあります。

長期優良住宅・GX志向型住宅・ZEHの比較表

長期優良住宅・GX志向型住宅・ZEHの違いを下記の一覧で確認しましょう。

長期優良住宅 GX志向型住宅 ZEH
主な目的 数世代に渡り長く安心して住み続けられる家 2050年カーボンニュートラル実現のためのより省エネ性能に優れた家 年間一次エネルギー収支を0以下にする家
省エネ性能 省エネ基準(一次エネルギー消費量等級6 以上 ・再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量削減率35%以上
・再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率100%以上
・一次エネルギー消費量等級6以上
・省エネ基準からの削減率20%以上(再生可能エネルギーを除く)
・創出したエネルギー(太陽光など)を含め100%以上の一次消費エネルギーの削減
断熱性能 断熱等性能等級5以上が目安 断熱等性能等級6以上 断熱等性能等級5以上
太陽光発電などの再エネ設備 必須ではない 導入するのが一般的 必須ではない
耐震性 耐震等級3 耐震要件はなし 耐震要件はなし

※地域や住宅の形態によって基準が異なります。実際に建築を検討される際は、最新の法令に従って専門家にご相談ください。

おわりに

長く快適に暮らし続けられる長期優良住宅は、認定を受けることで安心した生活を送れるだけでなく、税制面や住宅の資産価値においてもメリットがあります。初期費用や維持の手間はかかるものの、長期的に見ると経済的な効果も期待できるでしょう。快適な住まいは、日々の暮らしをより豊かなものにしてくれるはずです。

ニチハでは、高い耐震性能を実現する耐力面材『あんしん』をラインナップしています。地震や台風時の外力から建物を守り、みなさんの快適な暮らしを支えます。

【記事更新日:2025年6月2日/記事公開日:2024年3月6日】

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