ニチハサイディングアワード
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2017 -
審査員総評 ESTIMATION
NICHIHA SIDING AWARD 2017 難波 和彦 総評審査委員長難波 和彦建築家・東京大学名誉教授。放送大学客員教授。
1977年一級建築士事務所(株)界工作舎を設立。
グッドインテリアデザイン賞、新建築吉岡賞、住宅建築賞、JIA環境建築賞、建築学会賞業績賞など多数受賞。代表作に「箱の家」シリーズがあり、標準化・多様化・サステナビリティをコンセプトに掲げた都市型住宅のプロトタイプとしてデザイン・開発を手がける。NICHIHA SIDING AWARD 2017 飯島 直樹 総評NICHIHA SIDING AWARDの審査に参加することになって、少々戸惑った。建築の外部の有り様を評定するアワードだからである。私はインテリアデザインを専門とする。そこで建築の骨格よりも、私に身近な空間現象とりわけ表層という側面から応募作を観察してみた。このアワード審査を通じて改めて感じたことは、サイディングという素材の可能性である。コストパフォーマンス、耐候性、断熱性、多彩な種類といったサイディングの特質だけではなく、その一歩先の可能性だ。「本物の代替え品」感を払拭する近年のデジタル高度加工技術による表層や、あるいは艶加減やシール目地などの微細な表層処理に高解像度で注力することによって、サイディング材は自然界にない「独自の素材」としての可能性を持っている。受賞作はいずれも、様々な施設デザインの方向が明快であり、その方向をより魅力的にするために、こうしたサイディングの新しい特質(繊細な表層、金属質感、フラットな表面など)が生かされていたように思う。肌目を生かす照明デザインとのマッチング、内装材としての発見、商業インテリアへの進出なども今後期待したい可能性だ。
飯島 直樹インテリアデザイナー。
1985年飯島直樹デザイン室を設立。
2011年ー2016年工学院大学建築学部教授。
JCDデザイン賞、APIDA(香港)賞など多数受賞。5Sニューヨーク、blupondソウル、ほぼ日オフィス、PMOオフィスビルプロジェクト、工学院大学ラーニングコモンズ、STONESなどインテリアから環境全般のデザインまで幅広く活躍。 -
グランプリ GRAND PRIX
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住宅部門
栃木県I様邸
[ ポーラスターデザイン一級建築士事務所様 ]
- 審査員評
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凛とした切り妻の形式でしかも黒い外壁となると、重く硬い建物になりがちだ。しかしこの住宅は、そこに微細な操作=線の要素を加えることで豊かな住宅環境を生み出している。切り妻という形式を軽快に際立たせる金属サイディング特有の繊細な垂直線。素木を使った鼻隠しの斜めの線。そして足元のフェンスの水平線。線という繊細な表層が呼応して、この建物を軽やかで魅力的なものにしている。
- 使用商品
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センターサイディング
モノカラーシリーズST型 センターストライプU
ブラック
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非住宅部門
埼玉県レクサスCPO浦和美園
[ 有限会社デザイン・ワークス様 ]
- 審査員評
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レクサスショールームの色のフォーマットは黒であり、この店はそこに木と石を加味して上質感を演出する。だがこの空間の魅力は、施設全域をカバーする一枚の水平面にある。木質のフラットな天井面として現象するそれは、車で訪れる顧客へのウエルカムウイングであり、夜間にはロードサイドに向けた巨大な間接照明を演じる。ハイエンドなレクサスブランドのVMD起動装置として、この建築は秀逸である。
VMD:Visual Merchandising (ビジュアル・マーチャンダイジング)の略。ブランドのコンセプトや企画の意思をビジュアル化し、お客様とのコミュニケーション能力を高める手法で、見やすく、選びやすく、買いやすい快適な環境を提供。マーケティングの一環として行われる企業戦略活動。
- 使用商品
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COOL
メモリア
ブラックモエンエクセラード16
Fu-geモベルウッド
モベルブラウンE
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プラチナ賞 PLATINUM
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住宅部門
千葉県ホワイトベースハウス
[ アルキテク設計室様 ]
- 審査員評
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切妻屋根かと思うとスリットで分断される。整合とか統合とかの建築概念から自由な、親しげな住宅である。ダイナミックなファサードのリブパネルの選択、中庭と内部を一体化する為のフラットパネルの選択など、マテリアル選択も自由奔放でたのしい。
- 使用商品
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モエンエクセラード16
グランスペック60リブ9(パール)
シルキーMGパールⅡモエンエクセラード16
グランスペック60フラットウォール
プリミエMGホワイト
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非住宅部門
兵庫県ししだ眼科クリニック
[ 株式会社マツヤアートワークス一級建築士事務所様 ]
- 審査員評
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クリニックと飲食店舗との複合施設である。白と黒の塊が相貫する彫刻的な形態であるが、肌理の細かいサイディング材によって親近感が得られている。キャンティレバーのピロティとエントランスの吹き抜けは、街並と親和するインターフェース空間だ。
- 使用商品
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モエンエクセラード16
Vシリーズヴェレウォール調V
オーグMGピュアホワイトモエンエクセラード16
ニューグランドールシリーズⅠリーガストーン調
ランダMGネロ
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ゴールド賞 GOLD
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住宅部門
埼玉県A様賃貸共同住宅
[ 生和コーポレーション株式会社様 ]
- 審査員評
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Fu-geのリエゾンによる壁面のフラット感が、このアパートの存在感を決めている。木造建築には思えないマッシブでシャープなデザインである。ダークブラウンの外壁にくり抜かれたバルコニーは対比的な白。要素を絞った明快な表現が美しい。
- 使用商品
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モエンエクセラード16
Fu-geリエゾン
ロシェMGダークブラウンモエンエクセラード16
グランスペック60フラットウォール
プリミエMGホワイトCOOL
メモリア
ラベンダーCOOL
メモリア
ライトグレーCOOL
メモリア
ネーブルCOOL
メモリア
ブラック
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非住宅部門
千葉県菓匠梅月庭清見台本店
[ アルファープランニング株式会社様 ]
- 審査員評
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菓子の売り場、工房、喫茶の配置、そして日差しと千葉の風まで読み込む中庭の空間が素晴らしい。施主とは十数年のつきあい。熟練の設計である。黒い外壁(メモリアのとミライア)の配分も中庭をさらに引き立て、季節感と老舗の表現に貢献している。
- 使用商品
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COOL
ミライア
ピアノブラックCOOL
メモリア
ブラックモエンエクセラード16
Vシリーズマイスターウッド調V
イデアルMGチャコール
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入賞 PRIZE
北海道
掘立柱の家
[ 米花建築製作所様 ]
審査員評
建て主は北海道開拓者の5代目。外壁の原始林のような丸太と葉のようなルーバーは風雪で次第に風化する。実質の建築をガードする役割がサイディングで、何とそのコントラストが意図されているという。北海道に根ざしたコンセプチュアルな建築だ。
使用商品モエンエクセラード16
グランスペック60フラットウォール
アグレアMGピュアホワイト栃木県
life box+α
[ NASUホーム様 ]
[ 那須土木株式会社様 ]審査員評
金属サイディングの特質が十二分に生かされた住宅で、長尺製品を縦に使いシャープなボックス表現となっている。物置を付帯させつつボクシーにしたり、バルコニーを焦げ茶のサイディングにするなど、エレメント処理も相乗効果となっている。
使用商品センターサイディング
モノカラーシリーズST型 センターストライプU
ブラックモエンエクセラード16
Fu-geカルナウッド
ダークブラウンMG千葉県
ウチソトノウチ
[ 株式会社sside様 ]
審査員評
変形敷地に3つの箱をランダムに組み上げ、箱間の余白(中庭)と箱のインテリアとの境目が無い、何とも不思議な空間を内部に抱え込む住宅である。その抽象性を担保する為に外壁は閉じ、ピュアホワイトのフラットウオールが採用されている。
使用商品モエンエクセラード16
グランスペック60フラットウォール
アグレアMGピュアホワイト静岡県
HORI Dental Clinic
[ 大和ハウス工業株式会社 静岡支店様 ]
審査員評
歯科クリニックの戸建て施設。シンプルで力強いファサードの外壁が白となると、シンプルな表面が望ましく、風光TypeSPが採用されている。ウッドデッキの外部床と呼応する、軒天井の木目調がこのデザインの彫りを深くしている。
使用商品風光HOOKOU
Type SP
純白軒天12
木目調
ティンバーベージュ愛知県
MOVE若宮
[ 株式会社マリモコンサルティング様 ]
審査員評
集合住宅にとって、バルコニーは住人のアクティビティの舞台のようなものだ。無味乾燥な箱形建築の活性化手段となり得る。この事例はそのひとつだ。二色のモベルウッドをさらに雁行させてまで、住まいの劇場化にチャレンジした。
使用商品モエンエクセラード16
Fu-geセルクレール
エルフィンMGクリアホワイトモエンエクセラード16
Fu-geモベルウッド
モベルベージュEモエンエクセラード16
Fu-geモベルウッド
モベルブラウンEモエンエクセラード16
Fu-geモベルウッド
モベルダークグレーEモエンエクセラード16
Fu-geラトワール
ラトワールプラチナE愛知県
ラストノートの家
[ アーレックス株式会社様 ]
審査員評
20世紀モダニズムに特有の白い建築は、平滑で目地の無いフラットさが条件といってもいい。この住宅のように「美術館のような」を目指したデザインでは、その条件は必須、木造でその条件を満たす工法としてモエン大壁工法が必然的に使われている。
使用商品モエンエクセラード16
ニューグランドールシリーズⅠリーガストーン調
ランダMGネロモエン大壁工法
小粒ロックS
岐阜県
則武中モデルハウス
[ 株式会社フェスティナ・レンテ様 ]
審査員評
住宅のプライバシーを確保する為の、クローズな外観の住宅である。閉じたファサードなのだが、NS型ネオスパンプレミアムのシルバーとミラベルストーン調とをソリッドなオブジェのように配分している。二つの素材の対比が効果的だ。
使用商品センターサイディング
プレミアムシリーズNS型 ネオスパンプレミアム
ライトメタリックシルバーモエンエクセラード18
グリニッジ18シリーズミラベルストーン調
ミラベルMGダークEモエンエクセラード16
Vシリーズリーガストーン調V
ランダMGパウダー京都府
K様邸
[ 有限会社テクトスタジオ様 ]
審査員評
まるで何十年も前から在ったかのような、濃厚な「気配」の住宅だ。京都の町屋のコンテクストを見事に引き寄せる。くしびき柄や木目柄のサイディングを用いることで法規をクリアし、京都に入り込んでいる。庇の処理などディテールも秀逸だ。
使用商品モエンエクセラード16
グランスペック60コートリーウッド
トランクMGウォルナットモエンエクセラード16
VシリーズしぶきV
プラムMGブラウンⅡ大阪府
光陰の窓(Court House M)
[ Y's design 沖 裕輔様 ]
審査員評
何よりもプランが素晴らしい。メゾネットでプライベートコート付き賃貸集合住宅を直線的に配置し、小さな街の界隈を出現させているのだ。潔く白一色でも飽きない空間である。リキッドシェイプのランダムな横ストライプが場を得ている感じだ。
使用商品モエンサイディングS18
リキッドシェイプ
シャドーMGホワイト -
Fu-ge賞 Fu-ge
和歌山県
M様邸
[ 株式会社マルコーホーム様 ]
審査員評
窓が少ない住宅は施主の要望であった。その要望の精度をデザイン的に上げるため、目地シールの無い均質な表面が可能なFu-geが使われている。しかしそれを超えてこの住宅が魅力的なのは、二つの勾配屋根の唐突といってもいいドッキングだ。
使用商品モエンエクセラード16
Fu-geカルナウッド
カーボンブラックMG兵庫県
Y様邸
[ 株式会社リブライフ RIPARO様 ]
審査員評
木造とは思えないマッシブでシャープな住宅だ。開口方向を限定し道路側には窓が無い。単純明快なプランである。その分窓の無い大壁には「一枚の壁」であることが要求され、目地シール無しのFu-geが3種類採用されている。
使用商品モエンエクセラード16
Fu-geモベルウッド
モベルダークグレーEモエンエクセラード16
Fu-geエコルセ
リベルMGクリアホワイトモエンエクセラード16
Fu-geエコルセ
バグーMGグレー -
リフォーム賞 REFORM
広島県
佐々木医院及び住宅内外部改修工事
[ 株式会社 KI works様 ]
審査員評
築80年の木造モルタルの診療所。困難を乗りこえてのリフォームである。元々の建物がバランスのとれたキュービックなもので、従ってFu-geによるサイディング仕上げは理にかなったものだが、モルタル下地の調整など努力の結晶である。
使用商品モエンエクセラード16
Fu-geセルクレール
エルフィンMGホワイト -
公共建築賞 PUBLIC
宮崎県
小林市地域・観光交流センター(KITTO小林)
[ 切畑建築設計室様 ]
審査員評
宮崎県小林市の観光交流センターで、駅周辺の整備事業のひとつである。JR駅舎との調和から茶系の外装と、一部の格子仕様が方向づけられた。大きなフレーム形態が特徴で、木造らしからぬ質感としてCOOLのメモリアが使用されている。
使用商品COOL
メモリア
ダークブラウンモエンエクセラード16
Fu-geルボン
レセピMGホワイトモエンエクセラード16
Fu-geカルナウッド
ホワイトアッシュMGモエンエクセラード16
Fu-geカルナウッド
ダークブラウンMG
昨年度で、審査委員長の杉本貴志さんが退任され、今年から新しく飯島直樹さんが審査員に就任された。飯島さんは、杉本さんと同じインテリア・デザインの出身だが、並行して建築のデザインも手がけられており、幅広い活動を展開されている。初めて一緒に審査に臨むことになり、やや不安ではあったが、幸いにも審査基準について意見の相違はほとんど感じられなかった。まず、今年は住宅においても非住宅においても、昨年のような突出した作品が見当たらなかったのが残念である。昨年は大手ゼネコンやアトリエ建築家からの応募があり、頭一つ抜け出していたからである。しかし一方で、総体として見るならば、作品のレベルは明らかに底上げされているように思われる。このため、昨年とは逆に、入選作品の候補として選んだ作品数は、いつもより多くなり、それらに順位をつけることに、かなり苦労したのが正直な感想である。それだけサイディングの使い方が人口に膾炙し、設計者や工務店に浸透してきたことの表れかもしれない。審査基準としては、製品の構法仕様を遵守しながら、サイディングの種類を選択し、建築デザイン全体に統合している点に注目した。耐候性や防火性については言うまでもないが、サイディング構法の容易さや重量の軽さを、どう活かしているかと言う点も重要な条件である。今回の上位入賞作品の中には、窯業系ではなく、金属系サイディングが見られることも、サイディングの多様性の表れとして特筆しておきたい。