地域性を読み解き、それを具現化できるマテリアルを選ぶ
ニチハ
2010年開業の摂津市駅、2013年開業の西山天王山駅など、その後も複数の駅舎に継続して採用いただいておりますが、決め手はどういった点でしょうか。
摂津市駅外観。太陽光発電や壁面緑化でカーボンニュートラルを推進。
堀口
摂津市駅は、駅に起因するCO2排出量を実質的にゼロにする「カーボン・ニュートラル・ステーション」がテーマとして念頭にありました。
環境配慮素材となると、木材や石など自然素材が思い浮かびますが、耐火性能やコスト面での課題がありました。
そんな中、サイディングにおいては耐火性能はもちろんのこと、コストパフォーマンスに優れ、かつ、お客様から見ても自然素材に近い意匠性・質感があり環境意識を感じられるということで、
設計当初から採用することを前提とした意匠設計となりました。
駅舎においては特に、公共建築物としてふさわしい地域特性にあったデザイン、質感が求められます。あらゆる条件を加味しながら設計者の意図を表現できる素材のひとつとしての
サイディングを評価しています。
ニチハ
駅ごとに弊社のサイディングの意匠を変えておられるようにお見受けしました。駅舎壁面の意匠設計でご留意いただいている点についてお聞かせください。
堀口
駅は地域性を表現する象徴的施設ともいえます。いかに地域性を読み解き、それを具現化できる、イメージにマッチしたマテリアルを選定するかが設計における重要なポイントとなります。
ニチハ
日々、駅を利用される乗客の皆様から、何かご反応のお声など聞かれていらっしゃいますでしょうか。
堀口
摂津市駅は開業から10年以上経ちますが、きれいな状態を保っており、好感をもってご利用いただいていると感じます。
SDGsの観点から建材を考える時代に
ニチハ
近年「木造」建築物への関心が高まっているかと思いますが、今後の駅舎新設・改修において「木造」を意識されることはありますでしょうか。
園田駅高架下「rico®園田保育園」。駅との一体感が特徴的。
堀口
SDGsなど環境への意識は年々高まりを見せており、今後、大阪万博を機にさらに環境配慮社会に移行していくものと考えております。
建築物のマテリアルにおいても、より環境への配慮を感じられる「間伐材」や「集成材」、「再成木」の採用が徐々に増えていくのではないでしょうか。
駅舎においては特に首都圏にて積極的に採用されているものと認識しています。
ニチハ
「SDGsへの貢献」はやはり今の時代のキーポイントですよね。建築業界でもその一環として木促法が改正され、非住宅物件での木造利用が加速しています。
堀口
近年では耐火性に優れた木造システムにおいても開発されていますし、木は環境配慮型社会において要になる素材であり、多くの場面で検討される素材になると考えております。
しかし、コスト面では鉄骨造よりも割高になる可能性があるので、今後需要が増える中で、より気軽に採用できる環境になることを期待しております。
ニチハ
最後に、弊社のサイディングについてご意見やご要望などありましたらお聞かせください。
洛西駅~桂駅間高架下。本来の高架下の暗さを感じさせないおしゃれな印象に。
堀口
サイディング以外の素材では、単体で耐火認定が取れているケースがあります。
それらに比べると副資材等が多いサイディングは、設計段階においては課題があると感じます。
シンプルな構成のサイディングが開発されれば、飛躍的にスペックインできるフィールドが広がるのではないでしょうか。
工業的なものではなく、よりマテリアル感を感じられる素材や、ある程度のフリーサイズ品、仕上げ材自体が完全にリサイクルもしくはリユース可能な素材の開発についても期待しています。
ニチハ
サイディングがより多くの物件で選ばれる素材になるよう、研究・開発を進めてまいります。貴重なご意見をいただきありがとうございました。