“再メンテナンスのコスト”が論点に 窯業系サイディングが拓いた可能性
ニチハ
築35年の分譲マンションにおける、3回目の大規模修繕工事となった今回の改修プロジェクト。まず工法や建材などの選定の経緯をお聞かせいただけますか。
改修前の外観。既存の外壁はRC躯体にタイル調の塗装を施したもの。
橋本
(前回の修繕時と同様)当初は、外壁全体を再塗装する方向で相談していました。しかし10年後には再び塗装し直す必要があり、足場代を含めた予算組みが問題となっていました。
そんななか窯業系サイディングを使った新しい工法について教えて頂いたわけです。
仲
改修工事というと、どうしても従来と同じ工法や素材に終始することが多いので、このたび窯業系サイディングをご提案させて頂きました。当社としても今回、新たなチャレンジができてうれしく思います。
陣内
どこの管理会社もメンテナンスの周期を伸ばす傾向がありますね。12年とか、なかには18年というケースも…。その点、塗り替えや張り替えのメンテナンスが、30年近く不要の窯業系サイディングはコスト面で長期的にみて優位性があると感じます。
ニチハ
外壁の改修とあわせてサッシやドアの交換などの断熱改修を行ったそうですね。
大規模改修を経て蘇った外観。建物のイメージが180度変わり、重厚感・高級感が増した印象。
陣内
重ね張りで外壁が外側に出るので、同時に工事できたのはタイミング的にも良かったですね。
橋本
マンションの住人にとってサッシ交換などの目に見える改修は大変インパクトがあり、賛同を得やすいのです。また資金繰りの面でも、断熱改修に係る助成金が交付されたことで実施に大いに弾みがついた。
今回の大規模改修工事とあわせて12年前倒しでのサッシ工事は、マンション内の調整と費用の両面で大きなメリットを生みましたね。
近隣のマンション住人からの評判も上々 外観のイメージが180度変わった
ニチハ
既存建物の外壁に胴縁を這わせ、上から衣を着せるようにサイディング材を施工していく工法(MARCシステム)についてはどうお感じになられましたか。
施工の様子。足場を組み、既存の壁面に金属製の胴縁を直接アンカーで固定していく。
陣内
もともとは大板タイルの重ね張りを検討していたのですが、これだと縦張りに限定されてしまう上、コストも非常に掛かる。その点もMARCシステムは仕上がりに満足しています。
橋本
住人の方々に説明する際、外壁が外側に出ることに不安の声もありました。でも実際にモデルを作って一緒に確認しながら進めていただけたので問題ありませんでした。
陣内
建物への納まりは確かに最大の問題でしたね。新築なら設計通りに割り付けすればよいのですが、改修の場合は手すりなどの細かな個所をどう納めるかなど、現存する建物に対しての組み込み方法を考えないといけないので。
ニチハ
外壁材Fu-ge(フュージェ)の一番の選定理由は何だったのでしょうか。
陣内
長期的なメンテナンスコスト低減が期待できることですね。次の大規模修繕では、塗装仕上げした部分のみの改修で全体に足場を組む必要もないので、トータルの費用がかなり抑えられます。
ニチハ
Fu-geのデザイン面の評価いかがでしたか。
デザインは既存のタイル調と同様のものを想定し、Fu-ge「ソラニティー」を採用
橋本
既存がタイル調の塗装だったので、今回の仕上がりテイストも同様のものを想定していました。重厚で美しい仕上がりに、住人の皆さん満足しています。
陣内
外壁同士の継ぎ目が目立たないので、窓が無い側面や吹抜けなど、面積が大きい平面部が特に素晴らしい。凄く綺麗ですね。アングルによってはまるで新築みたいに見えます。
半面、細かな箇所をすっきりと納めるのには苦労しました。
橋本
継ぎ目が見えないのは本当に壮観ですね。サッシをすべて交換したこともあり外観のイメージが180度変わりました。近隣のマンションに住んでいる方からの評判も上々。
この建物は改修で「何か凄いことをやったみたいだ」と噂になっています。(笑)。
ニチハ
当社の製品や工法へのご要望、今後の改修プロジェクトへの取り組みなどについてお聞かせください。
陣内
断熱性能を強化した窯業サイディング…。もしもそんな製品があったら補助金の対象にもなるしお客様にもお勧めしやすくなるでしょうね。
メゾンエクレーレ鷺沼では、次の次、の大規模修繕工事でトータルの黒字化を見込んでいます。それと厚みがもう少し薄いと良いですね。
サッシまわりなどが納まり易くなるので、窯業サイディングは天然のタイルに比べて剥落の心配が無い。
改修工事においては非常にポテンシャルを秘めた外壁材&工法だと思いますね。
プロジェクト当時を振り返る橋本様、仲様、陣内様。
橋本
メンテナンス期間を延ばせる利点に関しては、もっと一般に周知されていって欲しいですね。今回は各社が前向きに取り組み、住人んを含めて全員一致で協力し合えた大変ハッピーなプロジェクトだったのではないでしょうか。